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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)36号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告ら主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1 成立に争いのない甲第三号証、第四号証及び第六号証によれば、本願第一発明は、定尺材料から自動的に製品を打ち抜く加工(ブランキング)を行う方法に関するものであつて(本願明細書第二頁第一〇行、第一一行)、従来のブランキング加工は、コイル状に巻いた帯材をロールフイード、グリツパーフイード等により自動送りを行つてブランキングするのが一般的であるが、コイル状の状態で入手できない程の比較的厚い板で、しかも中量生産の場合は、この方法を採用することが不適当であるため、汎用のプレスを使用し、入手容易な定尺材料からブランクを得ることが有利となるが、この場合には定尺材料から如何に多くのブランクを得るかが問題となる(同第二頁第一三行ないし第三頁第四行)との知見に基づき、この問題を解決することを技術的課題とし、本願第一発明の要旨とする構成を採用したもの(同第三頁第五行)であつて、その結果、「例えば一枚の定尺材料からブランクを得るような場合であつても自動的にかつ容易に行ない得る」(同第一九頁第七行ないし第九行)という作用効果を奏するものであることが認められる。

原告らは、審決が認定した本願第一発明と引用例記載のものとの相違点(2)、すなわち、本願第一発明は解析区分した複数個の加工パターンのうちから適宜選択した加工パターンを用いるものであるのに対し、引用例記載のものは具体的な使用形態が明らかでないことについての審決の判断は誤りであるとし、その理由として請求の原因四(審決の取消事由)1及び2のとおり主張する。

原告らの右主張を要約すると、原告らの主張する本願第一発明は、現場的に通常よく用いられる加工パターンを最大公約数的にまとめ、このようにしてまとめた複数の加工パターンについて共通パラメータを定め、複数の加工パターンのうちの適宜の加工パターンにおける共通パラメータの設定記憶により加工パターンまで自動的に設定される特許請求の範囲記載の定尺材料からブランキングする方法の発明であると解される。

しかしながら、前掲甲第三号証、第四号証及び第六号証によれば、本願明細書には、別紙図面(一)第1図に示した(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の五つの加工パターンについて、X軸方向のピツチPx、Y軸方向のピツチPy、往路から復路に移行するときにおけるX軸方向の変位Cx、X軸方向のブランク数Nx、Y軸方向のブランク数Ny等の数値及び往路から復路に移行するときの金型の方向転換の有無等を、加工開始前にそれぞれの加工パターンに応じて数値制御装置にあらかじめ記憶させておくことにより、適宜に選択した加工パターンにおいて設定したとおりの加工が自動的に行われるものであることが記載されているが、これらの五つの加工パターンが現場的に通常よく用いられる加工パターンを最大公約数にまとめたものである旨の記載及びこれらの五つの加工パターンについて共通パラメータが設定される旨の記載はなく、このことを示唆する記載も見いだせず、ほかに、本願第一発明の要旨とする「解析区分した複数種の加工パターン」について共通パラメータが設定されていることを示唆する記載も存しないことが認められる。

したがつて、本願第一発明の要旨とする「X軸方向のピツチPx、Y軸方向のピツチPy」、「X軸方向の変位Cx」等のパラメータは「解析区分した複数種の加工パターン」について設定された共通パラメータであると解することはできない。

原告らは、本願第一発明において、所望の加工パターンがパラメータの選択によりいわば自動的に選択される点は本願明細書の第一五頁第一四行ないし第一六頁第八行、第一九頁第三行ないし第九行の記載から明らかである旨主張する。

前掲甲第三号証によれば、本願明細書の右該当箇所には、原告ら指摘の記載事項が存することが認められるが、これらの記載事項を検討しても、パラメータが解析区分した複数種の加工パターンについて設定された共通パラメータであり、そのパラメータの選択により所望の加工パターンが自動的に選択される旨の記載であるとは到底認めることができないから、原告らの右主張は採用できない。

そうであれば、原告らの前記主張は本願明細書の記載に基づかない主張であり、結局、本願第一発明の要旨とする「X軸方向のピツチPx、Y軸方向のピツチPy」、「X軸方向の変位Cx」等のパラメータは、それぞれの加工パターンについて個別のパラメータであると解さざるを得ず、このような各種加工パターンについての個別のパターンの設定は、原告が認める従来の選択方式、すなわち、あらかじめ制御装置に設定記憶させた複数の加工パターンの中から、パターン選択スイツチ等パターン選択操作手段を用いて適宜の加工パターンを選択し、続いて、選択されたパターンについての条件パラメータを設定する方式と異ならないから、この技術手段を制御装置を用いたブランキング加工に適用することは当業者にとつて容易になし得ることというべきである。

したがつて、前記相違点(2)について、「本願第一発明のような制御装置を用いたブランキングする方法において、解析区分した複数の加工パターンをあらかじめ制御装置に記憶させておき、その加工パターンから適宜取り出して用いることは、一般の工作機械の数値制御による加工方法に採用されている手段を、そのまま制御装置を用いたブランキング加工に適用したにすぎず、格別の困難性を要するほどのものでない」とした審決の判断に誤りはない。

2 以上のとおりであつて、本願第一発明は、引用例記載のもの及び従来から慣用の手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとした審決の認定、判断は正当であるから、審決に原告ら主張の違法はない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告らの本訴請求は失当としてこれを棄却することとする。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

1 定尺材料1からブランキングする方法にして解析区分した複数種の加工パターンのうちの適宜の加工パターンにおける最初の加工位置が金型の位置に位置するようにそのX軸方向、Y軸方向のスタート位置、X軸方向のピツチPx、Y軸方向のピツチPy、X軸方向のブランク数、Y軸方向のブランク数、往路から復路に移行するときにおける復路の加工開始位置のX軸方向の変位Cx等の各種数値及び往路から復路に移行するときの金型の反転の有無をあらかじめ制御装置に記憶せしめ、前記記憶により定尺材料1をX軸、Y軸方向に適宜に移動せしめるとともに金型の反転を行い、定尺材料1に、前記複数種の加工パターンから適宜に選択した加工パターンどおりの加工を行うことを特徴とした・定尺材料からブランキングする方法(以下「本願第一発明」という。)。

2 プレス機械の機台5に、材料をY軸方向及びY軸方向に対し直交する水平なX軸方向に移動位置決め自在の材料搬送装置を装着して設けるとともに、材料搬送装置をX軸方向及びY軸方向に移動せしめる駆動装置を設け、前記機台5に装着したダイホルダー37にダイ41を回動固定自在に装着して設け、前記ダイホルダー37の上方において上下動自在に設けたパンチホルダー35に前記ダイ41と協働して材料にブランキング加工を行うためのパンチ39を回動固定自在に装着して設け、前記ダイホルダー37、パンチホルダー35の少なくとも一方に前記ダイ41、パンチ39を回動して方向転換せしめる回動起動装置を装着して設け、前記ダイホルダー37、パンチホルダー35に材料を剪断するための剪断装置を付設して設け、前記駆動装置及び回動起動装置を適宜に制御するための制御装置を設けて成ることを特徴とした・定尺材料からブランキングする装置(以下「本願第二発明」という。)。

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